仙石のバス停で降り、国道138号線に沿って乙女峠に向って歩き始める。昨年の11月に金時山へ登った時と同じ道であった。
乙女口から乙女峠の登りは、歩きやすくコース時間通りの約40分で上がることができた。乙女峠から金時山へ登山する人も多く、乙女茶屋では常連者らしい年配者達が何人か集まっていた。展望台からの富士山の眺望は素晴らしい。
乙女峠には悲しい話がある。昔、仙石原に"とめ"という美しい一人の娘がいた。もっぱら"お"をつけて"おとめちゃん"と呼ばれてきた。重病で苦しんでいる父の病をなんとか治そうと、娘はこの峠を越えて毎夜、祈願にでかけていた。
箱根で最も富士山が美しく見える峠。そんなイメージのぴったりするのが乙女峠。峠から視界いっぱいに広がる富士の姿は、まさに素晴らしい一語につきる。箱根外輪山にあって、北に長尾山、南が丸岳、その中間鞍部が乙女峠。峠の下は乙女道路がトンネルで抜けている。
峠は明るく、そして広い。なんといっても富士山の大きな展望がいい。外輪山の縦走コースに峠道が交差している。
乙女峠からは金時山へ登る道とは反対に、丸岳から 長尾峠へ続く道を歩く。右側には富士山、左側には箱根の山々と芦ノ湖を眺めながらの稜線歩きは爽快な気分にさせてくれる。
乙女峠から長尾峠分岐までは約1時間の行程であったが、途中すれ違う人は数人程度と少なかった。長尾峠分岐手前にある展望台からは、眼下に多くのゴルフ場と芦ノ湖が一望できる。
長尾峠(自然)は、富士山と箱根の山々を前後左右に眺めることができる数少ない場所のひとつである。長尾峠の名前は、長い尾根道をたどった人々が、いつとはなしにそう呼ぶようになったという。かつて、箱根仙石原に江戸幕府が裏関所を設けたことがある。
長尾峠から少し下り深沢仙石原線に出てからは、大箱根カントリークラブのゴルフ場方面に向って山道を歩いた。
早川沿いの「湖尻仙石原自然探勝路」では、高齢者の方々や幼い子供ずれの親子とすれ違う。また、ゴルフ場では緑が美しい芝生の上でプレーを楽しむプレーヤーがよく見えた。
仙石原高原の交差点は、観光バスとマイカーで大混雑であった。そして、カメラを片手に持つ観光客は、ススキに囲まれた細い坂を登り、お気に入りの場所で記念写真を写していた。
「仙石原高原は、箱根古期外輪山と中央火口丘にはさまれたカルデラ底にある標高650から700mの高原地帯は、仙石原と呼ばれている。その昔、初代将軍源頼朝が、この雄大な原野を眺めて「この地を開墾すれば米千石は取れるだろう」と言ったことが、地名のおこりだと伝えられている。」(※)
約2万8000年前、箱根火山帯のひとつである神山噴火により、早川がせきとめられ、現在湿原として名残りをとどめている湖が形成された。さらに、3000年前の神山水蒸気爆発により、声ノ湖と分断され、下流側は排水、乾燥化が進み現在のような高原になった。
今年、初代海賊船パイオニア号(1964年)から50周年を迎える。
箱根海賊船上から眺めた龍宮殿。