日向薬師終点のバス停に近づくにつれて、田畑の側に咲く真っ赤なヒガンバナが目に入ってくる。
生憎の曇り空であったが、この辺りがヒガンバナの名所で、大勢の方々が写真撮りを楽しんでいた。
通称日向薬師とよばれる日向山霊山寺(真言宗)は、寺の縁起によれば、僧行基が薬師如来の託宣により、大山の東方山麓に白鬚明神と熊野権現の2神の援助を得て、霊木に薬師如来像をきざんで一宇を構えたことにはじまり、霊亀2年(716)の開基と伝えられる。
杉の巨木はいずれも樹齢八百年と推定され、高さは約50m、周囲は6,7mあろう。初代鎌倉公方足利基氏が日向薬師に大幡を奉納した折、この杉の木にかけたという言い伝えから、「幡かけの杉」とも呼ばれ、神奈川県の天然記念物に指定されている。
開創以来、朝廷の尊崇は篤く、暦応3年(1340)鋳造の銅鐘の銘文には、平安時代の村上天皇や鳥羽院から梵鐘を下賜されたとある。
本堂の左手には、この薬師の本尊である薬師三尊像をはじめ、阿弥陀如来像、四天王像、十二神将像など二十五点の国重要文化財が収納された宝物殿がある。昭和46年(1971)に建てられたもので、本尊の鉈彫り薬師三尊像は宝物殿の大きな厨子に安置されている。